日本財団 図書館


 

?A線膨脹係数が鋼材の2倍
?B熱伝導度が鋼材の2倍
?C溶解温度が鋼材よりかなり低い
ことがあげられる。?@は鋼材の3倍たわむことを示し、必要あれば変形の制限を考慮しなければならない。変形量の調節は、材料をなるべく効果的に使用するのがよい。例えば、曲げを受ける場合は、部材のウェブ深さを一足として断面積を増やすよりも、ウェブ深さを増加させた方が経済的である。引張り又は圧縮の軸荷重を受ける部材の場合は、その長さを伸縮させて検討するよりも、応力を減少するように断面積を増やすことが望ましい。
?Aは鋼材の場合よりも溶接時におけるひずみ発生量が大きいことを意味する。寸法上からは面内の横収縮が大きくなり、平板に防橈材一本をすみ肉溶接で取り付けると1mm前後縮むなど、その例である。
?Bと?Cは、溶接後のひずみ取り作業が鋼材の場合よりも比較的面倒となり、かつ、加熱温度に注意が必要なことを意味している。
また、?A〜?Cと関連して平板骨組構造では強度計算上から得た板厚が薄いと、溶接作業が難しくなるし、やせ馬等の溶接ひずみも大きくなりがちである。これを低く抑えるには、溶接作業者の技量も関係するので一概にはいえないが、少なくとも5〜6mmの板厚が必要となろう。軽量化の趣旨には反するが、計算板厚よりも設計板厚を増すことによって、ひずみ取り作業その他が減少して経済的となることもある。また、後述するπセクション等の大型押出形材を使用する目的の一つには、ひずみ取り作業の削減が含まれている。
3.1.4 押出形材の利用
溶接構造で大切なのは、溶接線を極力少なくすることである。その手段の一つとしてアルミニウム合金の特徴を生かした押出形材の利用があり、
?@溶接工数の低減
?A溶接ひずみの減少
?B部材寸法精度の向上と重量軽減
が期待され、延いてはすみ肉溶接等における溶接欠陥の減少、工期短縮、組立費低減に繋がる。
押出形材を多用しているのはアルミ電車構体と高速艇である。前者は外板に5083合金広幅板と7003(Al−5.6%Zn−0.7%Mg)合金大型押出形材、骨材に7NO1(Al−4.6%Zn−1.2%Mg)及び7003合金押出形材を用いた平板骨組構造から、最近では外板、骨材とも6N01合金大型薄肉押出形材を多用した形材組合せ構造が主流となっている。後者は50m級アルミニウム合金船10)が代表例であり、船殻と上部構造に大型押出形材(πセクション)を多用し、チャイン、キール、ガンネル及び上部構造の屋根幹部のR材も全て大型押出形材から成り立っている。両者の共通点は、前者が箱型、後者は一般にV型船底で船首部を除けば直線部が多いので、いずれも押出形材を使いやすく、かつ、ミグ自動溶接に適した構造といえよう。高速艇は、船体の50〜75%が押出形材で組立可能といわれているが、小型漁船の場合は船型等から大型押出形材の採用が比較的難しい。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION